外国における商標権取得の重要性とその手続きについて
外国出願
公開日:2018年12月03日
目次
外国における商標権取得の重要性
指定する商品・役務の範囲内(これらと紛らわしい範囲を含む)で、登録商標と同一の商標やこれに類似する紛らわしい商標を、他人が使用した場合、権利者は、当該他人の行為を禁止(排除)することができます(損失が発生していれば、損害賠償の請求も可能です)。
そのため、商標権を取得すれば、権利者は、指定する商品・役務の範囲内で登録商標を独占して使用することができることから、商標権を取得した国において、オンリーワンのブランド戦略を展開することが可能となります。
すなわち、権利者は、その国おいて、誰にも邪魔されずにブランドイメージを構築し、提供する商品・役務に対する需要者からの高い信用を獲得維持することができることから、外国において、商標権を取得しておくことは、その国で有利にビジネスを行う上でも、非常に重要であるということができます。
外国で商標権を取得するためには?
外国で商標権を取得するためには、その国で商標登録出願を行い、審査を経て登録を受ける必要があります。
外国への商標登録出願の方法
外国へ商標登録出願を行う方法としては、次の2つのルートがあります。
- 出願する国へ直接出願を行う
- マドリッド協定議定書に基づく国際登録出願を行う(マドプロ出願)
上記①又は②のどちらの出願ルートを採用するかについては、出願対象国が条約(後記参照)に加盟しているか、出願国数、出願費用、出願の緊急性、商標の管理をどうするか等の点を考慮して、戦略的に決定します。
出願する国へ直接出願を行うルート
現地代理人を通じて、出願する国の特許庁へ直接出願を行います。
このルートでは、出願国の現地代理人を通じて出願手続きを行うことから、その国の商標法や規則に適した形で出願手続きを進めることができるとともに、出願後の拒絶理由通知の対応等を迅速に行えるというメリットがあります。
ただし、出願する国の数が多い場合には、上記②のルートと比較して、費用が増加する傾向にあり、また、商標権の維持等についても各国で行うことになることから、商標権の管理等が煩雑になるという面があります。
マドリッド協定議定書に基づく国際登録出願にて出願するルート
日本において出願又は登録されている商標を基礎として、マドリッド協定議定書に加盟している国へ出願を行います。なお、この出願は、本国官庁(日本の特許庁)を通じて、国際事務局に対して行います。
国際登録出願の場合、英語で記載した願書を一つ作成すれば足り、商標による保護を求める国(締約国)ごとに願書を作成する必要はありません。なお、国際登録出願の際には、商標による保護を求める国(締約国)を指定する必要があります。
このルートであれば、現地代理人を介さずに出願することができることから、その後、拒絶の通報がなされずに、指定した国で登録となった場合には、上記①のルートと比較して、現地代理人費用を節約することができます。
また、商標権の管理等についても、国際事務局に対して手続きを行うことで、一元した商標権の管理が可能となります。
なお、このルートでは、出願する国の数が多い場合には、コストや手続き等の点において、非常に便利な方法ですが、出願できる国がマドリッド協定議定書の加盟国に限られている点には注意が必要です。
また、このルートでの出願は、日本の出願又は登録を基礎に行われているため、基礎としている日本の商標登録出願が拒絶されたり、その登録が消滅等になった場合には、国際登録にも影響が及ぶ場合があります(国際登録の取り消し)。
上記出願を行った結果、商標による保護を求められた国の官庁(指定国官庁)より、拒絶の通報がなされなければ(拒絶の通報が撤回された場合も含む)、出願人は、その締約国において、商標による保護を受けることができます(拒絶の通報期間は12ヶ月または18ヶ月)。
直接出願と国際登録出願の比較
上記のとおり、国際登録出願は、願書の作成や出願手続きが一つでよいこと等から、直接出願の場合に比べて手続きが簡素化されています。よって、国際登録出願を行う方が直接出願を行うより、効果的に(簡易・迅速に)各国での商標による保護を受けることが可能といえます。
ただし
- 出願対象国がマドリッド協定議定書に加盟しているか
- 出願国数
- 出願費用
- 出願の緊急性等
を考慮した結果、直接出願を行う方がより効果的といえる場合もあります。
したがって、直接出願と国際登録出願のいずれの出願ルートが効果的かについては、最終的に戦略的な分析を行った上で判断する必要があります(いずれのルートを選択して出願するのがよいか又は併用して出願するのがよいか等)。
まとめ
このように、外国において商標権を取得することは、非常に重要であるといえることから、皆様におかれましては、これを機に、是非一度、外国での商標権の取得について、ご検討されてみてはいかがでしょうか。