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知的財産とは?

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公開日:2016年06月20日

知的財産とは?
最近、TPP交渉に関するニュースが多く報道されているせいか、新聞、テレビ等において、「知的財産」という言葉を目にする機会が増えたように思います。
しかし、知的財産と一口にいっても、その種類は多岐に渡り、各知的財産の内容も複雑難解であることから、多くの皆様にとっては、知的財産の具体的な中身について、なかなか、イメージを持てないのが正直なところではないでしょうか。
そこで、今回は、知的財産の具体的な内容についてお話をしたいと思います。

目次

  1. 知的財産とは?
  2. 知的財産の特性
  3. 知的財産の重要性
  4. まとめ

知的財産とは?

知的財産とは、形のない無形(無体)の財産の総称であり、その中には、様々な内容のものが含まれます。では、知的財産の中には、どのような財産が含まれているのでしょうか。この点について、知的財産基本法では、知的財産の内容を次のように規定しています。

知的財産基本法第2条第1項
この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。

したがって、この規定によれば、知的財産には、

①人間の創造的活動により生み出されるもの

  • 発明・・・技術的なアイデア。主に特許
  • 意匠・・・工業製品のデザイン。椅子のデザイン等
  • 著作物・・・音楽、小説、絵画等

②事業活動に用いられる商品又は役務(サービス)を表示するもの

  • 商標・・・ブランドマークに寄せられる需要者の信用(業務上の信用)
  • 商号(会社の名称)

③営業秘密等の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報

  • 製造方法等の技術ノウハウ
  • 顧客の個人情報

といった内容の財産が含まれていることになります。

以上より、知的財産とは、上記①~③の財産を総称するものとなります。

知的財産の特性

知的財産は、上記①~③にいう財産の総称であるところ、これら知的財産は、アイデアや情報等のように、目に見えない形のないものであることから、これらを盗むこと(模倣すること)は、極めて容易であるといえます。
また、知的財産は、盗まれても、当該財産が、その所有者の目の前から消えてなくなることはないことから、知的財産の所有者は、その事態を容易に把握することができません。

したがって、知的財産には、「他人に盗まれやすく(模倣されやすく)、その事態を把握しにくい」といった特質があります。
なお、この点については、目に見える形のある財産と無体財産である知的財産とを比較することで、より具体的にイメージすることができます。

比較の具体例

車(目に見える形のある財産)が盗まれた場合には、その車は、所有者の目の前から消えてなくなることから、この車の所有者は、自分の車が盗難されたことについて、いち早く気が付くことができます。したがって、車の所有者に気付かれず、車を盗むことは、容易なことではありません。

これに対し、発明に関するアイデア(上記①の知的財産)が、盗まれたとしても、その発明に関するアイデアは、依然として、発明者の頭の中にあることから、これにより、そのアイデアが発明者の頭の中から消えてなくなることはありません。

したがって、発明者は、これが盗まれたとの実感がわかないことから、このような事態を容易に発見することができません。また、発明に関するアイデアを発明者から盗む(模倣する)ことは、そもそも、発明者に気付かれにくいものであることから、目に見える形のある財産の場合と比較して、容易であるということができます。

なお、上記車のケースの場合には、車は、世の中に1つしか存在しないことから、所有者は、その車を返してもらわない限り、その車を使用することができませんが、知的財産(上記発明に関するアイデア)は、盗まれたとしても、発明者をはじめ、これを盗んだ者にも同時に利用することができることから(複数の者による同時利用が可能)、ひとたび、知的財産が盗まれてしまった場合には、これによる損害が拡大する傾向にあります。

知的財産の重要性

知的財産は、発明や商標等に関するものであるところ、例えば、発明は企業の技術力に、商標は企業のブランド力に関するものであることから、企業経営にとって、知的財産は切っても切り離せない関係にあるものといえます。

しかし、知的財産には、上記のとおり、「他人に盗まれやすく(模倣されやすく)、その事態を把握しにくい」といった特質があることから、知的財産を適切に保護しなければ、市場における優位性を確保することができず、効率的に利益を得ることができない事態に陥るおそれがあります。

したがって、「知的財産をいかに保護するか」ということは、企業戦略を立案する上で、欠かすことのできない重要事項といっても過言ではありません。

具体的事例

A社は、多額の費用を投じて新しい技術を開発し、この技術を活用した商品を、いち早く市場に投入しました。

最初は、競業する者がおらず、A社は順調に利益を上げていましたが、A社は、この技術に対して、特許権を取得していなかったことから、この商品(技術)を見た競業他者(B社)は、A社の技術を参考に、A社の商品と同じ機能を有する商品を開発し、これを後発的に市場に投入しました。

当然、B社は、A社の技術を参考に、この商品を開発したことから、この商品の開発にあたり、A社のように多額の費用を投じていません。

そのため、B社の商品は、A社の商品よりも価格が安く、しかも、A社の商品と同じ機能を有することから、需要者は、次第に価格の安いB社の商品を購入するようになりました。

結局、A社は、開発費用の関係で、商品の価格をB社の商品よりも低く設定することができず、最終的にはB社との価格競争に敗れ、多額の開発費用を回収することができませんでした。

この事例で、A社が、その技術に対して特許権を取得していれば、A社は、B社に対して、特許権侵害に基づく差止請求権を行使して、B社を市場から排除することができたものと思われます。

よって、もし、A社が、知的財産による保護を図っていれば(特許権を取得していれば)、商品の価格を維持することができたことから、このような事態に陥ることはなかったでしょう。

まとめ

今回は、知的財産の内容についてご説明させていただきましたが、これを機に、知的財産の保護についてご検討されてみてはいかがでしょうか。