よくある質問 - 意匠

意匠登録出願前に商品を販売すると、意匠権は取得できないのでしょうか?
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Q

新しいデザインの椅子を開発しました。しかし、人気にある商品のためこの椅子が他人に模倣されてしまうのではないかと心配です。そこで、この椅子について意匠権を取得し、他人の模倣を防止したいと考えていますが、意匠権を取得することは可能でしょうか?インターネットで調べたところ、意匠登録出願前に商品を販売すると、その商品についての意匠権は取得できないと書いてあったのですが本当ですか?

A

当該椅子は、販売により新規性を喪失していますので、意匠権を取得することはできません。
ただし、新規性喪失の例外規定の適用を受けることができれば意匠権を取得できる場合があります。

弁理士による詳しい解説

弁理士 児玉 道一

意匠権を取得するためには、「新規性」という要件を満たさなければなりません(意匠法第3条1項各号)。これを具体的に説明しますと、出願に係る意匠が出願の時点において、世界中の誰にも知られていないものである場合には、当該意匠は意匠登録を受けることができるというものです(他の登録要件を満たしていることが条件となりますが)。

ここで、本件の「椅子」が「新規性」の要件を満たすか否かについて検討すると、本件「椅子」は販売により既に公に知られている状況ですから、出願の時点において「新規性」を喪失しています。

したがって、本件「椅子」について意匠登録出願を行っても意匠権を取得することはできません。

ただし、本件「椅子」について、新規性喪失の例外規定の適用を受けることができれば、本件「椅子」は新規性を喪失していないものとみなされます(意匠法第4条第2項)。

よって、この場合には、本件「椅子」についての意匠権を取得できる場合があります(他の登録要件を満たしていることが条件となります)。

なお、新規性喪失の例外規定の適用を受けるためには、

  1. 意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して、本件「椅子」が公知となったこと(新規性を喪失したこと)。
  2. 新規性を喪失した日から1年以内に意匠登録出願を行うこと。
  3. 意匠登録出願と同時に「新規性喪失の例外規定」の適用を受けたい旨を記載した書面を特許庁長官に提出すること。
  4. 本件「椅子」が「新規性喪失の例外規定」の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面を、意匠登録出願の日から30日以内に特許庁長官に提出すること。

の要件を満たす必要がありますので、ご留意ください(意匠法第4条第2項、第3項)。